私たちはこの教室から卒業する。

 卒業まで、あと一ヶ月の時だった。

 眠ったふりをしていると、隣で座っていた和真が席を立つ気配がした。

 私は薄目を開けて彼をそっと見た。
 彼は、教卓の方に向かって行く。


「頼むから、僕の好きな子を連れていかないでくれ……」

 和真は確かにそう呟いていた。

 呟くと同時に、音を立てないようにしてガムテープを剥がしていた。でも微かにビリビリと音が聞こえてくる。

 思わず顔を上げそうになったけれどぐっと堪えた。