婚約解消されたシャルロットがエリス国へ戻ることをあの両親がこころよく思うはずがない。ならば、自分で食い扶持を見つけて生活するしかないのだから。

 その第一歩として、こうして刺繍を作っては売って現金を作っていた。僅かながら宝飾品も持っているが、平民として平穏に過ごしたいのならばそれを売るのは得策ではないことをシャルロットは五度目の人生で知っていた。
 貴族でもない人間が高価な宝飾品を売りに出せば、盗品だと疑われて騒ぎになるか、偽物だと決めつけられて不当に買い叩かれるだけだ。

「シャルロット様。本日はとてもお天気がよろしいですわ。よろしければ、午後から訓練場に散策に行かれませんか?」

 空気の入れ換えのために窓を開けて外を眺めていたケイシーが振り返る。

「訓練場? わたくしはいいわ。別の場所に出かけたいから」
「そうでございますか」

 ケイシーは残念そうに眉尻を下げる。

 訓練場には、一度目の人生の際によく訪れた。
 週に一度、エディロンが直々に騎士団の訓練状況を視察し、自身も稽古をつけるのだ。