ところがだ。

 目の前の女性は王女その人だった。

『第一王女のシャルロット=オードランでございます』

 そう言われてようやく事態を理解する。エディロンがエリス国で会ったのは第二王女、目の前の女性は第一王女であり、別人なのだ。

 そして、シャルロットと名乗った今日来たばかりの婚約者はとんでもないことを言い出した。

『わたくしとの結婚を、取りやめてください』

 そう言われた瞬間に、沸々と怒りが湧いてくる。この女もまた、ダナース国を平民の国家、自分が輿入れするような価値がないと見下しているのか。

 しかし、怒りのままに問いただした結果引き出した言葉に、今度は混乱した。

『わたくし、結婚というものがとにかく嫌なのです』

 心の底から嫌なのだろう。その台詞は魂の叫びのようにすら聞こえた。