シャルロットはふと部屋の片隅に目を向ける。持ってきた僅かな荷物はすでに室内に運び込まれていた。
 荷物のほうへと歩み寄ったシャルロットは、積み重なる箱の一番上に置かれた竹かごの蓋をそっと開ける。

「ガル、おいで」

 箱の中から飛び出してきたのは、シャルロットのペットである羽根つきトカゲだ。エリス国の離宮では二匹飼っていたが、そのうち一匹を連れてきた。もう一匹はジョセフの下にいる。

「閉じ込めっぱなしにしていてごめんなさいね」

 シャルロットが謝罪すると、ガルは口をパクパクと開けて「ギャ」と鳴いた。返事をしているかのようなその仕草に、笑みが漏れる。

「すぐそこにお庭があったから、ここはきっとガルにとって過ごしやすいわ」

 部屋の扉を開けて手を離してやると、ガルはススッと外へと消えて行った。

「さてと──」