ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが

 エディロンはそれを聞いて、意外に思った。

(あの女がねえ……)

 エディロンはエリス国で出会った高飛車な印象の王女を思い出す。あの王女ならダナース国の者に頭を下げることなど絶対にないと思っていたのだが。
 むしろ、エディロンの出迎えがないことに機嫌を損ねて激怒するかと思っていた。

(来たばかりで、猫でも被っているのか?)

 したたかな女であればそうであっても不思議はない。

「彼女は今どこに?」
「陛下に言われたとおり、王宮の一番奥の部屋にお連れしましたよ」
「わかった」

 セザールがいう〝一番奥の部屋〟とは、かつてレスカンテ国王の愚王が後宮として使用していた離宮の一室だ。王宮の中でも最奥に位置し、永らく使われていなかった。
 エディロンが普段使っている執務室やプライベート用の私室からも離れている。