そうして到着した本宮の一室。
 シャルロットは目の前で繰り広げられる光景に、困惑していた。

「嫌です。絶対に嫌ですわ! なぜわたくしが、あのような野蛮な者に!」

 取り乱して叫んでいるのは、妹のリゼットだ。

 なぜこんなことになっているかと言うと、シャルロットが国王陛下に修道女になりたいと願い出て無事にその許可をもらった直後、謁見室の入口にいた警備の騎士達の制止を振り切ってリゼットとオハンナが突如乱入してきたのだ。

「リゼット。そうは言っても。先方は『エリス国の王女を是非』と望んでいる。かの国を敵に回すのは得策ではない」

 苦々しげな表情でそう答えるのは国王陛下だ。

「病弱だから無理だと伝えてください」
「すでに会っているのだ。病弱というのは言い訳だとすぐに気付かれる」
「では、他の王子から求婚は来ていないのですか!?」