「確かにここで育てば、あの離宮の部屋は快適だろうな」
「お分かりいただけました?」

 シャルロットは背後を振り返るとにこりと微笑む。
 エディロンの言うとおり、ダナース国に行ってから案内されたあの離宮の部屋はここに比べれば天国のように快適だった。

 必要なものは揃っているし、ドアや扉は問題なく開閉できるし、ご飯はきちんと出てくるし、寒くないし!

「ここで六回も子供時代を過ごしたのか」
「はい。本当に、私が遠回りしたせいでジョセフには悪いことをしてしまいました」

 シャルロットは肩を落とす。

 あのあとジョセフに教えてもらったのだけれど、ジョセフは四度目の人生で既に自分自身の死亡ルートを回避する方法──即ちリロが神竜であり、自分自身はエリス国の国王になるという道に気付いていたという。
 それをさらに二回も追加して無駄死にを繰り返したのは、全てシャルロットのためだった。

 過去の経験から、ジョセフは自分とシャルロットのふたり共が死なないとループが発生しないことに気付いていた。そのため、非業の死を遂げたシャルロットにもう一度人生をやり直させるために、毒とわかっていながら王妃様の策略に嵌まり、自ら死を選んだ。