「でも、放っておけば今回も必ずやる。──つまり、僕はあなたを全く信用していないと言っているんです」

ジョセフは背後を振り返ると、そこにいる兵士に命じる。

「この者達を捕らえて、部屋に連れて行け。命じるまでは出すな」
「なっ!」

 オハンナは怒りに体を小刻みに震わせた。

「何の権限があってそのようなことを!」
「何の権限? 国王の権限です。仮にもエリス国の王妃なら憲法ぐらいよく読んでください。エリス国憲法第八条には神使についてのことが定められている。その第三項に『神使による加護を得た王位継承者が現れた場合、可及的速やかその者が王位を継承する』とある。つまり、僕がエリス国の国王だ」

 ジョセフは右手を自分自身の胸に当てる。オハンナの目が大きく見開いた。

「嘘よ。嘘だわ!」
「嘘ではありませんよ。連れて行け」

 どうすればいいのか戸惑っていた近衛騎士達は、そこでようやく自分達が仕えるべき相手が誰なのかを悟ったようで、オハンナを取り押さえる。