(完全に忘れていたわ!)

 別にエディロンはシャルロットからのプレゼントを期待してなどいないだろうけれど、建前上は婚約者なのだから渡したほうがいいだろう。

「実は、まだ決めていないの」
「あら、そうなのですか?」

 ダムール侯爵夫人はびっくりしたように目を丸くする。けれど、すぐにふわっと微笑んだ。

「でも、大丈夫ですわ。陛下はシャルロット様をとても大切に思っていらっしゃるから、何をプレゼントしてもお喜びになります」
「まあ。おほほ……」

 シャルロットは乾いた笑いを漏らす。
 それ、演技なんですよ。と言いたい気持ちを必死に抑えながら。

(それにしても、何がいいかしら?)

 ダムール侯爵夫人が言うとおり、エディロンは極端な贅沢品は好まないだろう。