物語はサイフォードという魔法のある架空の国を舞台にしており、その国に転移した青年が妖精姫と一緒に悪者に奪われた国を取り戻すというラブファンタジーだ。

 先日お茶会で知り合ったご婦人に教えてもらい第一巻を借りてみたのだが、なるほど夢中になる面白さだった。
 ケイシーからは『サイフォードはエリス国をモデルにしていると言われているのですよ』と言われ、エリス国は外国からこんなイメージを持たれているのかと驚いたものだ。

「町中の書店でも軒並み品切れだと聞くし……、待つしかないわね」

 楽しみにしていただけに、がっかり感も大きい。
 しょんぼりしながら貸し出しカウンターに向かおうとしたそのとき、「これは王女殿下ではございませんか」と声をかけられた。

 振り返ると、そこには三十代後半くらいの男性がいた。上質な衣装から判断するに、貴族だろうと思った。