「剣の指南を受けたことは一度もないと?」
「調べた限り、剣の師匠が付いたことはありませんね」
「家庭教師は?」
「それも、必要最低限だったようです。少なくとも、一流の講師を呼んで英才教育を受けているわけではなさそうです」
「間違いないのか?」

 エディロンは報告書を持ってきたセザールを見つめる。

「間違いありません。エリス国の王宮に勤めていたという使用人を複数人買収して聞き出しましたが全員同じことを言っています」
「なるほど。話はわかった。助かった」

 エディロンはセザールに礼を言う。セザールは一礼すると、部屋を後にした。

パタンとドアが閉められ、ひとり執務室に残される。
 エディロンはもう一度報告書を見つめた。