「シャルロット?」

 片方の手で、優しく背中を摩られた。
 急に大人しくなったシャルロットを心配したのか、エディロンが呼ぶ声がする。聞こえていたが、シャルロットはわざとその呼びかけを無視して顔を伏せた。

 今彼の目を見たら、泣いてしまいそうな気がしたから。

(今日は朝から働きづめで、疲れているのだわ)

 そうに決まっている。
 そうでなければこんな感情、湧き起こるはずがないのだから──。


    ◇ ◇ ◇


 私室に戻ったあとも、シャルロットはどこかぼんやりとしていた。

 ソファーに座っていると、ふと視界の端に何かが動いたのが見えた。そちらを見ると、羽根つきトカゲのガルがテーブルの上をのそのそと歩いている。

 シャルロットは、ガルのすぐ近くに一通の手紙が置かれていることに気付く。