(一度目の人生では一年もダナース国で過ごしたはずなのに、全然気が付かなかったわ)
自分がいかに籠の中の鳥だったかを実感する。
故郷のエリス国は〝神に愛された国家〟と呼ばれていたけれどここよりずっと貧しい人達がたくさんいた。
シャルロットは五度目の人生で、平民として生きる道を選んだ。放浪する最中、家もなく食べるものにも困っている子供達をたくさん見てきた。
(『神に愛された国家』だなんて、名前だけね)
自分の故郷を思い、複雑な気持ちになる。
「お嬢様。このように素敵な刺繍をありがとうございます。子供達も喜びます」
感傷に浸っていると、孤児院の先生がシャルロットに声をかけてきた。先ほど、刺繍の小物のいくつかをプレゼントしたのだ。