「けど、もうやめた。そんなガキみたいなことしたって虚しくなるだけやん」



麗くんは立ち上がって伸びをすると、私と見合せる。

麗くんは憑き物が落ちたように明るい表情になっていた。



「ゆらちゃんが取られるかもしれんって、うろたえてみっともない類も見られたことだし、この辺で手を引いとく。
ゆらちゃん、利用してごめんね」



そして渾身の申し訳そうな表情を見せつけ、私に許しを乞う。

利用されたから怒らなきゃ行けないはずなのに安心した。

よかった、いつものずる賢くて腹黒な麗くんだ。



「遠藤兄弟ってやっぱり性格悪いね」



笑ってるそう言うと、麗くんは「今さら?」といたずらっぽい本物の笑顔を見せてくれた。

麗くんの心に触れた日、見えなかった壁の向こうを教えてくれて、私たちはより一層の仲良くなれた気がした。