東京の優しいところ

「何か言えや。俺のせいなのかどうかってとこ、すごく大事なんよ」


そう健治に言われても、遠藤は吸い殻の当たった頬を指先でゆっくりと撫でるだけだった。健治は健治で、自分の頬に落ち始めた雨を嫌って、今夜はもう帰ろうと思い立ち上がった。


「雨やから帰る。俺のせいだって言うんなら離婚は無しな」


そう言い残して立ち去ろうとする健治の背中に向かって、「お前が好きや。だから離婚する」と遠藤が声を張り上げた。健治は立ち去ろうとした姿勢を元に戻して遠藤を見た。泣き出しそうな表情で遠藤は健治を見ていた。