学校という地獄から唯一放たれる日。






私は人通りの多い、街に出掛けた。





「あの映画見たー?」






「見た!主演の俳優カッコいいよね~」






「ラストでさ、『不幸になってほしいなんて思ってないよ。だから幸せにはならないで。』って!」






「あのセリフヤバかったー」






なんてキャーキャー言ってる彼女らの後ろを歩く。






彼女たちは知っているのか。






肩を並べて歩くこと、一緒に食べて感想を言い合うこと…







好きな人が出来て、その人に気持ちを伝えられること…






それはすごく尊いことだと。






それが出来ない人もいる、ということを。






「いらっしゃいませー」






明るくかけられた声は右から左に流れていく。






白、赤、ピンク、青、緑、黒…






どんなカラフルな服を見ても、なんか納得いかない。






よく見れば見るほどどれも似たように見えてきて、もとの位置に戻す。






(もういいや、帰ろ。)





自分好みのものを探す旅を諦め、外へ出た。





道端に出来た水溜まり。





薄く濁っていて、うっすら反射した自分。






まさに自分自身を表現されているようで腹が立ち、





その鏡を踏み潰すと、だらしない音が響いた。