15分後。

「…結局、全部食べ切っちゃうとは…。瑠璃華さん、大丈夫?」

「らい。くひの中かひびれて、上手くうこはらいらけれす」

「…うん。全然大丈夫じゃないね。何言ってるのか微妙に分からないや」

と、奏さんは言いました。

自分でも、呂律が回っていない自覚があります。
 
この口の中の痺れは、いつ取れるのでしょうか。

こんな風になったのは初めてですね。

自然治癒すれば良いのですが、もし治らなかったら、第4局に戻って修理を受ける必要があります。

そんな事態にはならなければ良いのですが。

私の、いえ、『新世界アンドロイド』の治癒能力に期待するとしましょう。

「…どうしよう?この後、また図書館に戻って、勉強を続けようと思ってたんだけど…」

「ふぁい」

と、私は答えました。

呂律が回っていません。

「帰る?瑠璃華さん、もう今日は帰って休んだ方が良いんじゃないかな」

と、奏さんは心配そうに言いました。

度々心配をかけて、申し訳ないです。

しかし。

「へいひれす。ひんへはいあんとろいとの、自己ひゆ能力は、にんへんのすうへんはいれすから」

「うん…。ほぼ何言ってるか分からないけど、大丈夫じゃないことは分かるよ。…ちょっと待ってて。何か、甘いジュースでも買ってくるから」

「ふぇ。かなれはん、気をふはわははつても…」

と、私は言いかけたのですが。

奏さんは、無視して自販機に向かって行ってしまいました。

気を遣わせてしまいました。申し訳ないですね。

「はい、甘いオレンジジュース買ってきたから、これ飲んでみて」

と、奏さんはペットボトルのオレンジジュースを持ってきてくれました。

「はりはとうほさいます」

「うん…早く飲んで、ちょっと呂律を戻そうか」

と、奏さんは言いました。

お言葉に甘えて、ジュースを頂きます。

相変わらず、味を感じないのですが。

何だか、ズキズキしていた口の中が、まろやかに緩和されたような気がします。

不思議ですね。

「ごくごく…。ふぅ。少し、口の中の痺れが取れたような気がします」

「あ、呂律が戻った…。良かったぁ…」

「ありがとうございます、奏さん」

「うん。お願いだから、もう無理しないで。勇気と無謀を履き違えたら駄目だって、偉い人も言ってたから」

「素晴らしい格言ですね。私も見習うことにします」

「切実に見習って。お願いだから」

と、奏さんは言いました。

奏さんにここまで言われてしまったので、今後は、このような無謀は控えることにします。

…そんな訳ですから、次は、9辛ですね。