…さて、そうこうしているうちに、時刻は既に午後12時を回りました。

「瑠璃華さん。そろそろ、お昼休憩にしようか」

「はい、分かりました」

と、私は答えました。

私は『新世界アンドロイド』なので、食物の摂取は必要ありませんが。

奏さんは人間なので、昼食を摂取する必要がありますね。

「瑠璃華さんは、お昼何が食べたい?」

と、奏さんは尋ねました。

食物を摂取する必要のない私に、選択権を譲ってくださるとは。

気遣いには感謝しますが、やはりここは、人間である奏さんに譲歩すべきだと判断します。

「奏さんが選択してください。私は何でも…いえ、食べなくても支障はないので」

「いや、瑠璃華さんも食べた方が良いよ…。じゃあ、近くにあるカレー屋さんに行こうか。チェーン店だけど」

と、奏さんは提案しました。

カレー。カレーライスのことですね。

知っていますよ。食べたことはありませんが。

「確か、食べ物でありながら、同時に刺激物だったと記憶しています。奏さんは刺激物を摂取しても大丈夫なのですか?」

「し、刺激物…。まぁ、そんなに辛いものが得意な訳でも、かといって苦手な訳でもないけど」

と、奏さんは言いました。

そうなんですね。

その点我が第4局の久露花局長は、極端に甘いものが好きで、辛いものは一切受け付けません。 

彼の前世はカカオ豆か、あるいはサトウキビである可能性も浮上しました。

「瑠璃華さんは、辛いもの大丈夫?」

「えぇ、大丈夫だと思います。経験はありませんが」

と、私は答えました。

何事も、経験してみなければ分かりません。

普段、私の味蕾は甘味しか刺激されていないので。

たまには辛いものを食べて、世の中には辛味という味覚もあるのだということを、教える必要があります。

その点、カレーショップは良い経験になるかもしれません。

「じゃあ、行ってみようか」

「はい、分かりました」

と、私は奏さんについて、カレーショップに向かいました。