それから、およそ30分ほど経過した後。

「書き上がりました」

と、私は言いました。

原稿用紙3枚が、綺麗に埋まっています。

完成ですね。

「…早いね…」

と、奏さんは言いました。

「そうですか?比較的楽でしたよ。サバイバル知識を一つ二つと書いていたら、あっという間に…」

「うん…。それは感想を書くものであって、サバイバル知識を書くものではないと思うけど…まぁ、書けたんなら良いと思う」

「そうですか」

と、私は言いました。

それなら、これで完成ということにしましょう。

実に為になる、読むべき感想文だと思います。

何なら、あともう10枚くらい書きたかったですね。

「奏さんは、もう読書感想文は書いたのですか?」

と、私は尋ねました。

「え?いや…まだなんだ」

「そうなのですか。早く済ませた方が良いですよ」

「うん、そうなんだけど…。でも瑠璃華さんには言われたくなかったよ」

と、奏さんは言いました。

そうですか。

「何の本について書けば良いのか、分からなくて。俺、普段あんまり本を読まないから…」

と、奏さんは困ったように言いました。

それは問題ですね。

「本を読むのは大切なことだと思います」

「そうだよね。その通りなんだけど…」

「では、読書家の私から、奏さんにいくつか、本をお勧めしましょうか?」

「え…良いの?」

と、奏さんは顔を上げて言いました。

「勿論です。奏さんには、『人間交流プログラム』の一環として、大切なことを色々と教えてもらっていますから。せめて、少しでもお返しがしたいです」

「そんな…。俺は大したことはしてなきよ。でも、良い本を教えてくれるのは助かる」

と、奏さんは言いました。

分かりました。では、私から奏さんに、いくつかおすすめの本を紹介しましょう。

折角図書館にいるんですし。

「…ではまず、一番のおすすめは…」

「瑠璃華さん、一番のおすすめか…。なかなか興味深いね。何?どんな本?」

「『猿でも分かる!ヘリの操縦法』です」

「…うん。何となく、知ってた」

と、奏さんは棒読みで呟きました。

奏さんも知っていたんですか。

やはり、この本はおすすめですから。読書家ではない奏さんも、聞いたことくらいはあったようですね。

良い本というのは、宣伝をしなくても、人の耳に伝わるものなのでしょうね。