…その翌日のこと。

私は、いつもより早めに登校しました。

大きな意味はありません。 

ただ、正気に戻っただけです。

あれだけ放心状態だった私は、ようやく自我を取り戻しました。

私は大したことはしていません。ただ、自分の思いを正直に、素直に伝えただけです。

その結果、奏さんを困らせることになって、申し訳ないのですが。

それなのに何故こうも、私の気持ちは晴れやかなのでしょう。

もう後悔することはないと、分かっているからでしょうか。

でもその為に、奏さんを困らせることになって、本当に申し訳ないです。

あのようなことを言われたら、気持ち良く転校することが出来ませんよね。

だから。

私は、残りの一学期間をかけ。

奏さんが、心置きなく転校出来るよう、最大限サポートするつもりです。

後ろ髪を引かれるような思いを、これ以上して欲しくはありませんからね。

次の学校で、奏さんに優しくしてくださる方が、たくさん見つかりますように。

私のことなど忘れるほどに、楽しい毎日を送ることが出来ますように。

そう願うばかりです。

…すると。

「…おはよう。今日早いんだね、瑠璃華さん」

と、登校してきた奏さんは言いました。

「…おはようございます。奏さんこそ、今朝は早いのですね」

と、私は言いました。

教室の中は、誰もいませんよ。

部活の朝練等がある方は、登校しておられますが。

彼らは朝練中なので、皆さん、運動場を駆け回っているか、体育館にいます。

朝練もないのに、このように早く登校しているのは…私と奏さんくらいのものです。

私は正気に戻ったので、早めに登校しただけですが。

奏さんは、何故こうも早くにいらっしゃったのでしょう。

「何か用事がありましたか?」

と、私は尋ねました。

小テストの勉強をしたいから、とか。教師と何か約束があるから、とか。

すると。

「うん、用事があったから、早く来たんだ」

と、奏さんは答えました。

そうでしたか。

「何の用事ですか?」

「瑠璃華さんに、伝えたいことがあって」

と、奏さんは言いました。

…私に?

「その為に、早く来たのですか?」

「うん」

「…それならそうと、言ってくだされば良かったのに。今日は、私も偶然早くに来ただけで…」

「そうだね。でも、瑠璃華さんも俺と同じ気持ちだって分かったから…。きっと瑠璃華さんも、早く登校してくれてるだろうな、と思って」

と、奏さんは言いました。

なんと。

奏さんは、私の行動パターンを推測したのですか。

奏さん、あなた分析官になれるのでは?