アンドロイド・ニューワールドⅡ

「そうなのですか。それはつまらなくなりますね」

と、琥珀さんは言いました。

案外琥珀さんは、あっさりしたものでした。

「短い付き合いでしたが、お世話になりました」

「うん…こちらこそ」

「落ち着いたら、また連絡をくださいね。チーズケーキでも送ります」

「それは心強いね…ありがとう」

と、奏さんは言いました。

琥珀さんは、さしてダメージを受けているようには見えません。

あっけらかんとしていますね。

実際、まだ奏さんと過ごした時間の短い、琥珀さんにとっては。

彼がいなくなったとしても、そこまで大きなダメージにはならないのでしょう。

充分、修復可能なダメージなのです。

…私と違って。

「お元気でお過ごしくださいね。転校先でも」

「うん。ありがとう、琥珀さん」

と、奏さんは答えました。

私も、琥珀さんのように言えたらどれほど楽か。

琥珀さんは立派です。

快く友人を送り出すという、友達として当然のことを、当たり前のように出来ています。

私より、『人間交流プログラム』に参加した時期は短いのに。

どうして私は、琥珀さんのように出来ないのでしょう。

さようなら奏さん、お元気で、と。

何故、そう言えないのでしょう。

そう言いたくないのです。どうしても。

親友の為に…後悔のないように…選択しなければならないのに。

いつまでも私には、それが出来ないのです。