アンドロイド・ニューワールドⅡ

『よ、良かった。久露花局長、正気に戻ったようで…』

『え?何正気って。私は元々正気だよ?どうしたの…って言うか頭が冷たい!』

『そ、それは申し訳ありません。でも久露花局長、瑠璃華さんが。瑠璃華さんの様子がおかしいんです』

『え、瑠璃華ちゃんが?』

と、久露花局長は言いながら、画面越しに私を見つめました。

が、私は不動です。

スリープモードなので。

『…ど、どうしたの瑠璃華ちゃん?何で固まってるの?』

「…」

『何で無視?え、怒ってる?何か怒ってるの!?』

「…スリープモードを継続します」

『えぇぇぇ!?』

と、久露花局長は、画面の向こうで叫びました。

私は、別に怒っている訳ではありません。

ただ、もぬけの殻になっているだけです。

『どうしよう翠ちゃん、瑠璃華ちゃんが、何故かスリープモードに入ってる!』

『は、はい。先程からそうなんです。一体どうしたのかって、心配で…』

『これは大変だ!もっと早く教えてくれたら良かったのに』

『…教えたかったんですけど、久露花局長が意味不明なことばかり言っていたもので…』

と、朝比奈副局長は言いました。

しかし、私は聞いていません。

『とにかくスリープモードから復帰させないと!瑠璃華ちゃん!るーりーかーちゃーん!起きてー!朝だよ!』

と、久露花局長は叫びました。

しかし、私は動きません。

別に寝ている訳ではありません。

スリープモードに入っているだけです。

『なんてことだ。瑠璃華ちゃんが起きてくれない!』

『ど、どうしましょう局長?』

『むむむ、こうなったら仕方ない。奥の手だ…』

と、局長は言いながら、コンピューター端末を操作し始めました。

『こっちから遠隔で、無理矢理スリープ状態から覚ますしか…。よしっ、これでオッケー!瑠璃華ちゃん、起きて!』

と、局長は言いました。

途端、私のスリープモードが解除されました。

はっ。

「…?」

と、私は目を覚まして、画面の向こうを見ました。

私、今何をしていたのでしたっけ?

『おはよう瑠璃華ちゃん!どうしたの一体?』

「…」

『何があったの?何でいきなりスリープし、』

「…再度スリープモードに入ります」

『ちょ、入らないで!入らないでーっ!起きてってば!』

と、久露花局長は、もう一度遠隔で私のスリープモードを、強制解除しました。

いたちごっこです。

こうして、私は再び目覚めさせられました。

『瑠璃華ちゃん!』

「…はい。何ですか」

と、私はかろうじて答えました。

何度もスリープモードが強制解除されるので、スリープしても無駄だと学習しました。