それからの数日間。

私は、もぬけの殻でした。

比喩ではなく、本当にもぬけの殻でした。

何かを考えようと思っても、何も考えられないのです。

頭と身体が、彼方に吹き飛んでしまったような錯覚を覚えます。

そのような訳なので。

「はい、じゃあ2行目から…久露花さん、読んでください」

と、教師が名指しで私を呼んでも。

「…」

と、私は全く気づかず、無言でした。

「…久露花さん?聞いてますか?」

「…」

「久露花さん、久露花さん!教科書を読んで」

「…」

「久露花さん!」

「…スリープモードに入ります」

「久露花さん!?」

と、いう教師とのやり取りも、私は聞いていませんでしたし。




「電波ちゃん、この間渡しといたアンケート用紙、もう書いた?」

と、隣の席で、クラス委員の湯野さんは言いました。

が、やはり私の耳には届いていませんでした。

「…」

「書いたなら、早く渡して」

「…」

「…ちょっと。電波ちゃん聞いてる?」

「…」

「電波ちゃんってば!」

「…スリープモードに入ります」

「は!?」

と、いう湯野さんとのやり取りも、私は聞いていませんでしたし。




極めつけは。

『やっほー瑠璃華ちゃん!もうすぐバレンタインだね〜!』

と、久露花局長は、画面の向こうで言いました。

が、それも当然、私の耳には届いていませんでした。