三学期を迎え、いつも通り登校してみますと。

「…あ、おはよう瑠璃華さん」

「おはようございます」

と、私は答えました。

奏さんは、いつも通りです。

初詣の後、何だか気まずい空気のまま、奏さんも落ち込んでいるように見えましたが。

数日たち、奏さんはいつも通りの奏さんに戻っていました。
 
そのことを喜ぶと同時に、あのときのあれは、一体何だったのだろう、という気持ちになります。

本当に、何だったのでしょう。

聞いてみたい衝動に駆られましたが、しかしそれを聞くことで、またあの、気まずい雰囲気に戻ってしまうかと思うと。

聞かない方が良いような気がして、結局なあなあにしてしまっています。

良くないですね。

しかし、奏さんはそのようなこと、全く気にしていない様子で。

実にいつも通り、会話しています。

むしろ、元気そうなくらいです。

「実はね、瑠璃華さん」

と、奏さんは切り出しました。

「はい、何でしょう」

「今度、叔母さんが帰ってくることになったんだ」

と、奏さんは言いました。

叔母さん?叔母?

奏さんの血縁の方ですか。

「帰ってくる、とは?」

「俺の母親の妹なんだけど、その人、ずっと海外にいたんだ。旦那さんが長期の海外勤務についてて、それに付き合って」
 
と、奏さんは説明してくださいました。

成程、ご主人に付き合って、海外で暮らしていた叔母さんがいらっしゃったのですね。

その叔母さんが、今度帰ってくると。

「それはまた、いきなりですね」

「うん。本当は、あと二年くらい任期があったんだけど、後任が早くに決まったから、じゃあ早めに交代しようか、って話になったらしい」

と、奏さんは言いました。

そのようなことがあるのですね。

しかし。

「…失礼ながら、奏さんの親類の方は、あまり人格的に優れた方はいらっしゃらないのだと思っていました」

と、私は言いました。

だって、以前教えて下さいましたよね。

奏さんの両親が、事故で亡くなった後。

奏さんの遺産目当てで、親族が揉めることがあったと。

あの話を聞いて、奏さんの親族は、ろくな人間がいないと思っていたのですが…。