「か、彼女なんて…そんな関係じゃないよ」

と、奏さんは答えました。

相変わらず、視線を逸らしたままです。

はい、彼女ではありませんね。

しかし。

「へぇ?学校1の鼻つまみ者が、偉くなったもんだな。高校デビューでもしたのか?」

と、奏さんの旧友は、嘲るように聞きました。

ん…?

学校1の鼻つまみ者、とは?

高校デビューとは?どういう意味なのでしょう。

それに、久し振りに旧友に会ったというのに、何故そのような、刺々しい言い方をするのでしょう。

「それとも、上手く介護要員でも捕まえたのか」

「ち、ちが…!そんなつもりで、彼女と一緒にいる訳じゃない」

「ふーん。何にせよ、お前には勿体ない美人だよな」

と、奏さんの旧友は言いました。

美人って、私のことでしょうか?

私は人ではなくアンドロイドですので、それを言うなら美アンドロイドです。

「まぁ、良いじゃん。高校デビューおめでとう。精々周りに迷惑かけないように頑張れよ」

と、奏さんの旧友は、せせら笑うように言いました。

そして、話はもう終わり、とばかりに踵を返し。

鼻を鳴らして、その場を立ち去りました。

…何だか、嵐のように過ぎ去りましたね。

何だったのでしょう、彼は。

いえ、奏さんの旧友なのでしょうけど。

終始刺々しくて、あまり友好的に接したいタイプではありませんでしたね。

そして。

「…」

と、奏さんも俯いたまま、無言です。

…大丈夫でしょうか?

折角旧友に会ったというのに、ちっとも嬉しそうではありません。

それに彼、旧友とは思えないくらい、毒のある言い方でしたね。

上から目線でしたし。

高校デビューの意味が分からないので、確かなことは言えませんけど。

どちらかと言うと、旧交を温めるよりも。

奏さんを、終始嘲って、馬鹿にしていたように思えます。

友達のやることではありません。

それなのに、彼のあの態度。奏さんのこの反応。

一体どういうことなのでしょう?

奏さんの気持ちを、理解してあげたいのですが。

先程のやり取りで、奏さんの気持ちを推測するのは、非常に難しいです。