「…?」

と、私は首を傾げました。

見覚えのない方ですが、どちら様でしょう。

「あ…君…」

と、奏さんは怯えたような顔で呟きました。

奏さんのお知り合いなのでしょうか。

「何やってんだ?こんなところで」

と、見知らぬ男性は聞きました。

我々は、初詣の帰りです。

恐らく、あなたもそうなのでは?

「奏さん、こちらは…?」

と、私は奏さんに聞きました。

「あ…えぇと、その…小学校のときの…クラスメイトだった人」

と、奏さんはしどろもどろになりながら、そう答えました。

成程、小学校のときのクラスメイトですね。

小学校のときに知り合って、高校生になっても声をかけてくださるとは。

とてもお優しい方ですね。

人の縁は、切ろうと思っても、なかなか切れないということなのでしょう。

ここは奏さんの親友として、私も礼儀正しく接し、

「おいおい、水臭いこと言うなよ。友達だったろ?」

と、見知らぬ男性、改め。

奏さんの旧友は、笑顔で奏さんにそう言いました。

なんと。奏さんのお友達だったのですね。

ますます、友好的に接さなくては。

しかし、気になるのは。

奏さんの旧友が浮かべている、あの笑顔。

湯野さんと悪癖お友達一行が浮かべる、あの悪癖笑顔にそっくりである、ということです。

あの悪癖のような笑顔、人間の間では流行っているのでしょうか。

あまり流行らせたくない顔ですね。

折角お優しい方なのに、何だか悪い印象を覚えてしまいます。

「そ、それは…」

と、奏さんは視線を彷徨わせていました。

大丈夫でしょうか。

先程、奏さんの気持ちを理解して欲しい、と神様に願っていましたからね。

私は今、奏さんの気持ちを推測しています。

きっと、昔の友人と突然会ったことで、嬉しいやら驚くやらで、戸惑っているのでしょう。

仕方ありません。小学校のとき別れた以来なら、実に四年ぶりの再会ですから。

涙の再会でも、私は一向に構いま、

「で?誰なんだよこの子」

と、奏さんの旧友は、私のことを顎でしゃくって、奏さんに聞きました。

…私ですか?

私は、奏さんの親友です。

しかし、奏さんの旧友は、おかしな誤解をしたようで。

「もしかして、お前の彼女?」

と、奏さんの旧友は聞きました。