そうこうしているうちに、神社に辿り着きました。

神社の場所なら、検索せずとも知っています。

去年、所用があって来たことがありますから。

「凄い人混みですね」

と、私は言いました。

イルミネーションのときも、かなりの人手でしたが。
 
今日はまた、それ以上の人混みです。

皆さん、初詣に集まっていらっしゃるのでしょう。

「そうだね。俺も…初詣に来るの、物凄く久し振りだから…。こんなに人が多いとは思わなかった」

と、奏さんは言いました。

車椅子だと、動きにくいかもしれません。

しかし、そのようなときも大丈夫です。

その為に、私がいます。

「ご安心ください、奏さん。いざとなったら、私が奏さんを、車椅子ごと担ぎ上げてうんぱ、」

「うん、じゃあ行こっかー。お参りしよう、お参り」

と、奏さんはにこにこしながら言いました。

何故ですか。

仕方なく、私はお参りに並んでいる人々の、最終尾に並びました。

「瑠璃華さんって、こういうの待つの、嫌じゃないタイプ?」

と、奏さんは聞きました。

待つのが嫌なタイプ?

そのようなタイプがいるのですか。

「私は、別に平気ですが…」

「そっか。俺も平気」

「平気じゃない方もいるのですか?」
 
「そもそも、人混みが嫌!って人は結構いると思うよ」

と、奏さんは言いました。

成程。そのような方は、そもそも初詣に来るべきではありませんね。

そもそも、ここに来ている方々も。

「新年にしかお参りに来ないのに、神様に願い事をするのは厚かましいですね。普段からお参りしている方ならまだしも」

「あはは…。そういうものだよ…」

「私のように、普段からお参りに来るべきです」

「瑠璃華さん、神社に通ってるの?」

と、奏さんは不思議そうに聞きました。

通っている、というほどではありませんが…。

「以前、丑の刻参りに来たことがありますので」

「…あぁ…そういえばそうだった…」

と、奏さんは言いました。

思い出してくださったようで、良かったです。

「でもね瑠璃華さん。丑の刻参りの為に神社に通うのは、どうかと思うよ。うん。切実に」

と、奏さんは真顔で言いました。

そうですか。

「お願いだから、誰も呪わないで」

「分かりました。では、奏さんの顔を立てて…今年は呪いません」

「…来年は呪う、みたいな言い方やめようよ…」

と、奏さんは遠い目で呟きました。

今年初の、遠い目モードも頂きました。

ありがとうございます。