至って正気な碧衣さんは、次々とプレゼントの中身を見せてくれました。

「お次はこれです。一晩かけて作った、紺奈局長の痛バッグ」

と、碧衣さんは言いました。

痛バッグとは何でしょう、と思いましたが。

それは、見たら分かります。

目の前にありますからね。

黒地のバッグに、大量の缶バッチがくっついています。

問題は、その缶バッチです。

全て、紺奈局長の顔写真の缶バッチでした。

「何処で用意したんですか?その缶バッチ」

「勿論お手製です」

と、碧衣さんは良い笑顔で言いました。

そうですか。

「今時は便利でしてね、缶バッチを自作で作れるキットが売ってるんですよ」

と、碧衣さんは教えてくれました。
 
「成程、それは便利ですね」

「でしょう?これで誰でも、画像さえあれば推しの缶バッチを作ることが出来るんです」

「そうですか。では私も、奏さんの写真を隠し撮りすれば、奏さん缶バッチを大量に量産出来るのですね」

「そうなりますね」

「…え?瑠璃華さん正気…?」

と、奏さんは呆然として呟きました。

私はいつでも正気です。

「そして最後に、これです、推しグッズと言えばこれ。紺奈局長応援うちわです」

と、碧衣さんは最後のプレゼントを見せてくれました。

うちわです。二枚のうちわ。

こちらも手作りなようで、片面には丁寧に紺奈局長の写真が貼り付けられ。

きらきらのシールや、リボンがくっついています。

そして裏面には、きらきら文字シールで、「紺奈局長しか勝たん!!」と書いてありました。

更に、空いているスペースには、赤やピンクのハートマークのシールが、ぺたぺた貼ってあります。

書いてあることの意味は分かりませんが、その熱意だけはしっかり伝わってきます。

紺奈局長への愛も感じますね。

そして何より、碧衣さんが楽しそうです。

「…うわぁ…」

と、奏さんはドン引きでした。

言葉もなくドン引きでした。

しかし奏さん、安心してください。

碧衣さんは、元々こういう方です。
 
通常運転です。

ただ、一つ思うのは。

「丹精込めて作った紺奈局長グッズが、まさか自分のもとに帰ってくるとは!これも運命。やはり僕と紺奈局長は、切っても切れない糸で繋がれているということですね!」

と、碧衣さんは、恍惚として呟いていました。

碧衣さんには申し訳ないですし、これほど嬉しそうな本人を前に、とても言うことは出来ませんし。

もし言ったら、再び碧衣さんとのアンドロイド対決が勃発しかねないので、言いませんが。

私はそのプレゼント、全く欲しくありません。

ので、碧衣さんのプレゼントは、碧衣さんがお引取りして、結果的には良かったのではないでしょうか。

このプレゼントで、一番喜ぶのも碧衣さんでしょうし。

良かったですね、碧衣さん。おめでとうございます。