アンドロイド・ニューワールドⅡ

…すると。

歩き始めて、五分もしない頃。

奏さんは、何故だかそわそわと、落ち着きのない様子で、身を捩っていました。

…大丈夫でしょうか?

「奏さん、どうかされました?」

「あ、うん…。いや、その…。瑠璃華さん…」

「はい?」

と、私は首を傾げました。

「俺も、色々考えたんだけど…。クリスマス会だけでも、開いてくれるから良いやって…。イブに会えるんだから…。それだけで充分って思ったんだけど…」

と、奏さんはもごもごと、口ごもりながら言いました。

…何が充分なのでしょう。

「やっぱり、二人きりで会う訳じゃないから…。その…」

「…?」

「クリスマス会とは別に、改めてその、瑠璃華さんと二人きりで会える時間を、作れたら…な…と、おもっ…」

「はい?」

「あ、いやいやいや。何でもない、何でもない!」

と、奏さんは慌てて、手を振りながら言いました。

…どうしたのでしょう。

意味不明なことを言って、おまけに挙動不審です。

人間が「何でもない」と言うときの、およそ九割以上が、本当は何かあるのです。

つまり、奏さんも何かしらの本音を隠している可能性が、非常に高いですね。

「どうしたのですか?…クリスマス会、やはり気が進みませんか?」

と、私は尋ねました。

「い、いやそういう訳じゃないんだよ。クリスマス会は、ちゃんと楽しみにしてたよ」

と、奏さんは相変わらず、慌てた様子で答えました。

何だか、心なしか、奏さんの顔が赤いように見えるのですが。

寒いのでしょうか。

天気も曇っていますからね。きっと寒いのでしょう。

早めに、琥珀さんの家に辿り着いた方が良さそうですね。

「ただその…クリスマス会とは別に、ね…?クリスマスに、二人きりで会えたら…嬉しいと思って…」

と、奏さんはボソボソと呟いていましたが。

私の頭の中は、早く琥珀さんのご自宅に辿り着くことでいっぱいでした。

よって、奏さんが呟いている言葉を、まともに聞いてはいませんでした。

「分かりました、奏さん」

「え、何が?」

「少しでも早く、目的地に到着する為に、奏さんを担いで運搬を、」

「ちょ、何のこと!?俺の話聞いて…いや、運搬はやめて!?」

と、奏さんは叫びました。

そうですか。やはり運搬は断りますか。

奏さんは、いつもそうですね。

では。

「分かりました。では最短ルートを検索しますので、その道を通って行きましょう。大丈夫です、あと10分足らずで到着予定ですから」

「あ、うん…。そっか、ありがとう…」

と、奏さんは言いました。

何だか上の空のように見えるのですが、私の気のせいでしょう。