アンドロイド・ニューワールドⅡ

クリスマス会当日。

私は、奏さんの住む児童養護施設に、奏さんをお迎えにあがりました。

「おはようございます、奏さん。今日はどんよりとした天気で、実にクリスマス会日和ですね」

「…うん。あまり良い天気ではないけど…クリスマス会は楽しもうね」

と、奏さんは言いました。

「こんなに曇ってるんだから、あしたは雪でも降れば、ホワイトクリスマスになるのに…。生憎、明日の天気予報は晴天なんだよなぁ」

と、奏さんは続けて言いました。

ホワイトクリスマス、というのが何なのかは不明ですが。

「お天道様の機嫌とは、そういうものです。いくら人が『今日は槍降らないかな』と願っても、お天道様は気まぐれで、晴れたり、曇ったり、雨を降らしたり、斧を降らせたりするものです」

「そうだね。斧が降ってるのは見たことないけどね」

と、奏さんは言いました。

そうですか。

実は、私もありません。

しかし、お天道様は気まぐれですから。

もしかしたら、今はどんよりと曇っていても。

午後になったら、快晴の空から、斧が大量に降り注ぐ可能性もあります。

気まぐれですからね。どんな天気になるから、そのときになってみなければ分かりません。

そういうものです。

…さて、天気のお話は、ここまでにして。

「では、琥珀さんの家に向かいましょうか」

と、私は言いました。

お天道様の気まぐれは、お天道様の勝手に任せます。

それはそれとして、私達は天気の如何に関係なく、今日はクリスマス会を開きます。

その為に、今日まで色々と準備をしてきました。

「うん。それは良いんだけど…」

と、奏さんは言いました。

…けど?

「瑠璃華さん、琥珀さんの家の住所、知ってるの?」

と、奏さんは聞きました。

「散々待ち伏せされたから、施設の近くなんだろうとは知ってるけど、俺も正確な場所までは…」

と、奏さんは言いました。

琥珀さんの住所が分からない、と心配なさっているのですね。

しかし、心配は御無用です。

「大丈夫です。事前に、琥珀さんからご自宅の住所を伺っています」

と、私は答えました。

住所さえ分かれば、あとはこの住所を脳内の検索機にかけるだけ。

自動的に、道案内をしてくれます。

ちなみに、碧衣さんにもこの住所を送信していますので。

彼も、同じ手段で琥珀さんの家に合流されることでしょう。

先に着いていますかね?

「そうなんだ、良かった。それなら安心して行けるね」

「はい。道案内はお任せください」

と、私は言いました。

さて、それでは出発しましょう。

私は奏さんの後ろに回り、彼の車椅子のハンドルを握りました。