「非常に面妖なものでしたね」

「はい。あれは大変奇妙でした」

「見たことのないブツです」

「危険な香りを感じましたね」

「いきなり現れたことが、また面妖ですね」

「学園からの刺客でしょうか?」

「その可能性はありますね」

「…うん、ごめん。さっきから二人共、何の話をしてるのか教えてもらって良い?」

と、私と琥珀さんが話しているところに、奏さんが言いました。

奏さんだけ、話についてこられなかったようです。

それは申し訳ありません。

奏さんにも、ちゃんと説明しておくべきでしたね。

とはいえ、奏さんも玄関を通ってきたのですから、あれを見ているはずなのですが。

奏さんは気にならなかったのでしょうか?

「奏さん。今日学校に来たとき、玄関に、昨日まではなかったものがあるのを見ませんでしたか?」

と、私は聞きました。

「え?学校玄関に?」

「はい。奏さんもご覧になったことと思います」

「あぁ…。もしかして、クリスマスツリーのこと?」

と、奏さんは聞きました。

クリスマスツリー?

あれは、そのような名前なのですか?

「緑色の、もみの木でした」

「はい。そのもみの木に、謎のオーナメントが飾ってありました」

「電飾が光っていましたね。頭の上に星までくっついていました」

「あ、やっぱりクリスマスツリーのことだったんだ」

と、奏さんは言いました。

クリスマスツリー。

奏さんは、あれが何なのかご存知なのですね。

「うちの学校、クリスマスが近くなると、ああやってクリスマスツリーを飾るんだよ。毎年恒例なんだ」

と、奏さんは説明してくださいました。

成程。あれは毎年飾られているものなのですね。

だから、既にこの学園で三年を過ごした奏さんにとっては、特に珍しいものではなかったのでしょう。

奏さんがちっとも驚いていなかったのは、それが理由だったのですね。

しかし、クリスマスツリーですか…。

「瑠璃華さんも、琥珀さんも、クリスマスツリー知らないの?」

と、奏さんは聞きました。

「私は知りません。それは何ですか」

と、琥珀さんは聞きました。

琥珀さんは、全くご存知ではないようです。

私はと言うと。

「クリスマスツリーは知りませんが、クリスマスなら知っています」

と、私は答えました。