…二人の局長との通信を終えて。

「はぁ〜…」

私は思いっきり伸びをして、溜め息をついた。

何だか、幸先の悪いスタートだなぁ。

先が思いやられるようだよ。

…とりあえず、琥珀ちゃんを碧衣君と同じ、私立青薔薇学園に編入学させなくて良かった。

明日にでも、学校で乱闘が起きてたかも。

碧衣君は、紺奈局長が絡むと正気を失うし。

琥珀ちゃんも琥珀ちゃんで、アンドロイド1ってくらいの、負けず嫌いだもんなぁ。

かろうじて、琥珀ちゃんは瑠璃華ちゃんと同じ、星屑学園だから。

二人のアンドロイドが衝突、なんて最悪の事態は避けられそう。

それだけが救いだよ。

「お疲れ様でした、局長…」

「ありがとう、翠ちゃん」

通信が終わると見るや、すぐに紅茶を運んできてくれる翠ちゃんが有り難い。

「大変でしたね。まさか初日から、三人の『新世界アンドロイド』が衝突するとは…」

「衝突って言うか、衝突未満だけどね」

かろうじて、未然に防げた。

瑠璃華ちゃんのお陰でね。

「でも、これからどうなるか…。琥珀ちゃんの負けず嫌いは、折り紙付きだからなぁ…」

「きっと大丈夫ですよ。瑠璃華さんは、あれで局長に似て、ぽやぽやしてるところがありますから。喧嘩を売られても、相手にしないですし」

え?翠ちゃん。

それ、褒め言葉として受け取って良いんだよね?

「…よし。考えても仕方ない。明日のことは、明日になれば分かる」

「はい」

「今日のところは…景気付けに、秘蔵のチョコレートでも食べて、元気を出そう」

「…景気付けじゃなくても、いつも食べてますよね」

「確か〜。ここの鍵付きの引き出しの中に、お高いチョコレートが…。…って、あれ!?」

私は、引き出しの中を開けて愕然とした。

…な、何で?

「ど、どうしたんですか?久露花局長」

「ない…。私の…私のお高いチョコレートがない!!」

「えっ?」

なんてことだ。一体誰の仕業なんだ。

チョコレート失踪事件だ。

「何処だ…。私のチョコレート〜っ!!」

と、いう私の叫び声が。

『Neo Sanctus Floralia』第4局の研究室に、響き渡ったのだった。