アンドロイド・ニューワールドⅡ

手前のテーブルには、チャチなライフルが4丁ほど並べられており。

奥の棚には、景品らしき的が、ずらりと並んでいました。

…ふむ。

「ここからこのライフルで狙って、あの的に当てれば良いんですね?」

「うん、そうだよ。でも、これ結構難しいよ」

「そうなんですか?」

狙撃と言うからには、的は5キロメートルは先かと思ったんですが。

これ、数メートルしかありませんよね?

正確に測定してみたところ、標的までの距離は、3メートル12センチですね。

目を閉じていても当たりそうです。

「とりあえず、やってみようか」

「そうですね」

と、私は言いました。

そして、二人分の料金を支払って、3発のコルク弾を受け取りました。

成程、これで撃つのですね。

これなら、的を外して人間に当たっても、大したダメージにはなりませんね。

「奏さんは、何を狙うんですか?」

と、私は聞きました。

「そうだな…。俺は立って撃てないし…。ダメ元で、あの一番大きなぬいぐるみに当ててみようか?3発共外すよりは、掠りでもした方が楽しいだろうし…」

と、奏さんは言いながら、景品棚の中で一番大きな、クマのぬいぐるみを指差しました。

成程、あのふてぶてしい大きなテディベアですね?

確かに、奴を狙い撃ちにしたら、爽快感はありそうです。

あれを撃ち倒したいとは、奏さん、何かストレスでも溜まっているのでしょうか。

「よし、じゃあ早速…えいっ」

と、奏さんは言いました。

そして奏さんの発砲したコルク弾は、テディベアの耳の横を通り過ぎ、ポスッ、と落ちました。

外れですね。

「う…。難しい。じゃあ2発目…」

と、奏さんは言いながら、2発目を発砲しました。

しかし、今度は更にテディベアから外れ、明後日の方向に飛びました。

テディベアが、まるで嘲笑っているかのように見えるのは、私の被害妄想でしょうか。

「うぅ…。俺、下手くそか…」

と、奏さんは呟きました。

「奏さんが下手くそなのではなく、まずフォームが整っていません。それでは、当たるものも当たりませんよ」

「そう言われても…。俺初心者だし…。えいっ」

と、奏さんは3発目を発射しました。

3発目のコルク弾は、テディベアの胴体右側に、コツン、と当たりました。

「あ、やった!」

と、奏さんは喜びの声をあげました。

まぐれですね。

しかし、ふてぶてしい図体を持つテディベアは、胴体を撃たれたにも関わらず、「ん?今何かした?」みたいな顔で、びくとも動きません。

動かざること山の如し。

「うーん…。当たったけど、やっぱり倒れないか…」

「あのクマは重心が下にあるので、威力の貧弱なコルク弾では、下半身を狙っても倒れないでしょうね」

「そっか、残念…。でも、一応一発は当たったから、それで…」

「では私が、奏さんの仇を討ってきます」

「…え?」

と、奏さんは首を傾げていましたが。

既に、私は一時的に、戦闘モードに移行していました。