ちなみに、その日の夜。

久露花局長から、緊急で通信が入りました。

「どうされましたか、久露花局長」

『うぅ…。瑠璃華ちゃーん…』

と、画面の向こうの久露花局長は、何故か半泣きで。

そして、頭は鳥の巣のようにぐちゃぐちゃで、服もボロボロでした。

何かあったのでしょうか。

『聞いてよー…。何だかおかしいんだよ今日…』

「何がでしょうか」

『私が外を出歩いたら、鳥に襲われて、車に何回も轢かれそうになって…野良犬にも追いかけられて…』

と、局長は涙声で言いました。

それは大変でしたね。

『挙げ句、私が大事に食べようと思って引き出しの中に入れておいたチョコレートが、何故か全部溶けちゃってたの!これどういうこと!?何かに呪われてるの私!?身に覚えがないんだけど!?』

「…」

と、私は無言になりました。

私には、身に覚えがあります。

それは大変でしたね。

『今日は本当に…不自然なほど災難だったんだよぅ。瑠璃華ちゃん、慰めて…』

と、局長は言いました。

…私が慰めると、何だか逆効果のような気もしますが…。

局長が慰めてくれと仰っているのですから、そうしましょう。

「元気を出してください、局長。長く生きていれば、丑の刻参りの標的にされることもあるでしょう。しかし、局長ならば、きっと乗り越えることが出来ます」

『うん、ありがとうるり…え?丑の刻参り?』

「今日悪いことがあったなら、きっと明日は良いことがあります。そう信じて頑張ってください」

『うん、ありがとう。でもちょっと待って?瑠璃華ちゃん、丑の刻参りってどういうこと?ねぇ、何があっ…』

「それでは慰め終わったので、失礼します」

『え?ちょ、まっ。瑠璃華ちゃん!?』

ブチッ。

…と、私は通信を遮断しました。

ふぅ。

世の中には、知らない方が幸せなこともあるというものです。