「進捗状況を尋ねるのを失念していました。今どのような状況なのですか?」

「えーと…。実はまだ、ポタージュにするじゃがいもが、カチカチの段階」

と、奏さんは答えました。

ボウルの中で、やたら大きく切られた生煮えのじゃがいもが、すっかり冷めていました。

…何も進んでいませんね。

「これを潰して、裏ごし器で裏ごしして、スープにする予定だったんだけど…」

と、奏さんは言いました。

「生煮えですね。これでは潰せないのでは?」

「うん…」

「そもそも、大きく切り過ぎですね。もう少し小さく切っていれば…」

と、私は言いかけました。

すると。

「何よ。アンタまで私のせいにするの!?」

と、ポタージュ担当の女子生徒は、私に食ってかかりました。

ガルガル期ですね。

「どうせ潰すんだから、多少大きく切ったって良いでしょ!?」

「多少と言っても、限度があるでしょう」

「これくらい潰せるでしょ。ちゃんとレシピ通りレンジにかけたんだから」

と、ポタージュ担当の女子生徒は、強硬論を唱えました。

いくらレシピ通りに温めても、これだけぶつ切りでは、なかなか火も通らないでしょう。

その証拠に具材は生煮え、そして既に冷めきって、余計潰しにくくなっています。

この状態で潰して、裏ごしまでするのは至難の業です。

「もっと小さく切り直して、それから温め直しましょう。打開策はそれだけです」

と、私は言いました。

「はぁ?そんなことしてる暇ないでしょ?」

「とはいえ、そうしないと前に進みませんから。こうして口論してる間に、少しでも…」

と、私は言いかけました。

そのときです。

彼女は、私にとって、大変聞き捨てならないことを言いました。

「大体緋村、アンタが役に立たないのが悪いのよ。足もない癖に、足を引っ張るだけなんだから」

「…!」

と、奏さんは無言で目を見開き。

そして、酷く困ったような、後ろめたいような表情になりました。

「こういう行事のときは、いつも休んでたじゃない。なのに何なの?普通の顔して出てきて。最近調子に乗り過ぎ、」

と、ポタージュ担当の女子生徒は言いかけました。

が、それ以上は言えませんでした。

理由は簡単です。

私が、ピシャリと彼女の頬を張ったからです。