アンドロイド・ニューワールドⅡ

やって来たのは、学校の近くにあるスーパーマーケットです。

私は滅多にスーパーマーケットに足を運ぶことがないので、こうしてじっくり買い物に来るのは、初めてですね。

ましてや、誰かと一緒に来るのは、これが初めての体験です。

「では、早速必要なものを買いましょうか」

「そうだね」

「奏さん、メモを読み上げてくださいますか。私がカゴに入れていきますから」

「うん、分かった」

と、奏さんは私の差し出した買い物メモを受け取りながら、言いました。

分業ですね。

奏さんと一緒に来て良かったです。

「ではまず野菜から…玉ねぎ、じゃがいも、付け合わせのリーフレタスと、飾り用のパセリ…ですか」

「4品も作る割には、野菜が少ない気がするよね…」

「そうですか?ここに、ロールケーキ用の果物も何種類か入るので、ビタミン類のカバーは出来ていると思いますよ」

「そっか…」

と、奏さんは何故か、浮かない顔です。

…何か気になることでもあるのでしょうか?

聞いてみても良いのですが、スーパーマーケットの中で長話をする訳にもいきませんから。

後回しですね。

とにかく、必要なものを買い揃えましょう。

「えーと、野菜と果物の次は…魚と肉類だね。鮭茶漬けの鮭と…ステーキ用の鶏肉が三種類…」

と、奏さんは言いました。

「って、本当に三種類も焼くつもりなのかなぁ…」

と、奏さんは呟きました。

まだ、腑に落ちていないようです。

「そういうレシピを持ってこられたのですから、そのつもりなのでは?」

「そっか…。何だか、自分の作れるものじゃなくて、作りたいもの…食べたいものを優先してる気がするよね、あの…女子三人は」

と、奏さんは言いました。

確かに、言われてみればそんな節がありますね。

鮭茶漬け担当の男子生徒は、とにかく楽をしたいから楽なレシピを、というスタイルでしたが。

私を除く女子生徒三人は、自分の食べたいものを優先している気がしますね。

そのような意思が、言動の節々から感じられます。

だからこそ、奏さんは心配しているのでしょうね。

自分達の食べたいものが、調理実習という限られた時間の中で、作ることが出来るものなのかどうかを、考慮していないから。

「俺と一緒にポタージュスープ作るって言ったあの人も…。俺は、ミキサーで簡単に混ぜて作るレシピを持ってきたんだけど…。却下されちゃったんだよね。地味だって…」

と、奏さんは言いました。

奏さんの持ってきたレシピって、やはり『猿でも分かる!』シリーズのレシピなのでしょうか。

いえ、それよりも。

奏さんが、先程から浮かない顔なのは、それが理由なのでしょうか。

奏さんチームもまた、簡単レシピではなく、本格レシピで作るメニューに挑戦しようとしているのですね。