アンドロイド・ニューワールドⅡ

…などと、思っていた時期が私にもありました。

次の家庭科の授業にて、私達は、それぞれ自分が探してきたレシピを見せ合いました。

私の担当はロールケーキなので、ロールケーキのレシピを探してきました。

私が持ってきたレシピの出典は、勿論。

『猿でも分かる!初心者のお菓子作り』です。

その中に、ロールケーキの作り方も載っていました。

奏さんが言っていたように、ホットケーキミックスを使ったレシピです。

このホットケーキミックスなるものを使うと、材料が少なく済み、かつ、細々した材料を混ぜる手間もなくなるそうです。

本に書いてありました。

やはり、本から知見を得るのは大事ですね。

しかし。

「これ、うちの家にあったレシピ」

と、湯野さんは、レシピをコピーした紙を見せてきました。

湯野さんは湯野さんで、ロールケーキのレシピを持ってきてくれたのですが。

湯野さんの家にあったレシピとやらは、私の『猿でも分かる!』シリーズの出典ではなかったようで。

当然出典が違えば、レシピの内容も違います。

湯野さんのレシピは、ホットケーキミックスから作るレシピではなく。

小麦粉や卵やバター云々を混ぜて作る、本格的なレシピでした。

更に、私のレシピだと、飾り付けもシンプルで、中身の具もイチゴだけでしたが。

一方湯野さんのレシピは、たっぷりの生クリームで飾り付けされ、様々な種類の果物がトッピングされていました。

久露花局長が好きそうですね。

このレシピを再現するのは、骨が折れそうです。

いくら、見事お茶漬けを作ってみせた料理上手の私でも。

しかも、今回は制限時間があります。

当然ですが、調理実習は授業の一環ですので、授業の時間内に作らないといけないんですよね。

下拵え、焼き時間も含めて、この飾り付け…。…大丈夫でしょうか。

どちらのレシピで作るべきですかね。

いくら、6人で分担して作るとはいえ。

やはり、時間に余裕を持たせた方が良いに決まっているので。

ここは、時短レシピである、私の『猿でも分かる!』レシピで作った方が、賢明なのではないかと思います。

そこで。

「湯野さん。ここにロールケーキのレシピが二つある訳ですが、やはり私のレシピで作りませんか」

と、私は提案しました。

しかし。

「え、何で?私のレシピの方が良いじゃん」

と、湯野さんは不満そうな顔で言いました。

何だかこのグループって、スムーズに事が進むということがありませんね。