食事を終えるころには、叶と僕の両親はすっかりと打ち解けていた。

「じゃあ私はお皿とか片付けるから、二人は部屋に戻っていいよ」

母は僕と叶のことを気にしているのか、そのように声をかけてくれた。

「叶は先に部屋に戻っていてもらってもいいかな」

僕は父にさっき気になったことを聞いておきたい。

叶に聞かれても問題はないと思うけど、念のために。

「わかった~戻ってるね」

叶は僕の両親にお礼を伝えてから、ふらふらと帰っていった。

叶がリビングの扉をすり抜けて、少し経ってから僕は父に尋ねた。

「父さん、さっき叶のことを伝えたときのことなんだけど、父さん最後に"幽霊の名前は"って聞いたよね。僕は最初に叶の名前を伝えなかったっけ?」

父にそう伝えたとき、少し難しい顔をしていた。

そしてゆっくりと口を開いて話し出した。

「いや確かに名前は聞いたが、なんだか違う気がしたんだ。その幽霊がどんな存在なのかもわからないけれども。話を聞いていて何というのか懐かしい感覚のようなものがして」

懐かしい感覚か…

僕も叶に初めて会った時、懐かしい感覚というか安心感があった。

「私も叶ちゃんに対しては、なんだか久しぶりに話したなぁみたいな感覚だったよ」

母からの一言もあった。

正直なところ、今はこれ以上聞いてもわからないかな。

「叶のことで何かわかったら教えてほしいんだけどいいかな」

両親は僕の方を向いて小さく頷いていた。

僕もリビングを出た。

叶は僕のことを知っていたみたいだし、きっと僕も叶を知っているのだろう。

でも叶のような子を、僕は今まで見た記憶も関わった記憶もない。

叶はどんな存在なんだろう。

どんな過去があって、なんで幽霊になったんだろう。

君と僕はどんな関係だったんだろう。

これだけ考えているけれども、実はあったことないのかもしれない。



自分の部屋の前に着き、扉を開けた。

叶は「おかえり~」とのんびりとくつろぎながら、僕に声をかけてきた。


少し静かな時間があった。


「修ちゃん、今日はいっぱいありがとう!幸せな一日だったよ」

満足気な表情をしていた。

「叶は満足したみたいだけど、まだ消えたりしないよね。僕はまだ君と一緒に居たいんだけど」

「すごくうれしいな~修ちゃんが"私と一緒に居たい"だって。私も修ちゃんとずっと、死ぬまで一緒に居たい!」

叶の発言には時々おかしなものがある。

今の"死ぬまで"というのも変ではある。

ひょっとしたらまだ生きているのか。

この不思議な少女について調べた方が良いのだろうか。

必要ないかな。

この時の僕はただ君のために。

「死ぬまで一緒にいよう」

僕の言葉を聞いて頬を赤らめる少女。

「今日は疲れたね。いっぱいいっぱいありがとう!」

照れていることを隠すように、僕に感謝を伝える叶。

「叶も少し疲れただろ。今日はもう休んでいいよ。明日も学校に行こう。美月と三人でもっと楽しもう」

食事の時から、叶は少しあくびをしていた。

「は~い。ありがと」と眠そうに返事をして、あたりまえのように僕のベッドに入った。

僕はどこで寝よう…



そんなことを思いながら、お風呂に入り、布団を準備して横になり、バタバタとした一日を終えた。