僕たちは少し遅れてお店に入った。

叶はお店の中のいろいろな家具に興味を持っていた。

幽霊は壁をすり抜けたりしながら、家具を見たりしてふわふわと楽しんでいた。

僕は椅子が置いてあるコーナーに向かった。



あまり自分で家具を選びに来ないこともあり、想像以上の種類に驚いた。

「こう見ると結構種類あるよね」

美月は僕の後ろから声をかけ、そのまま言葉を繋いだ。

「叶さんが座ることを想像してみて、似合いそうなのを選べばいいんだよ」

選ぶヒントをくれた美月に、振り返ってお礼を伝えた。

叶に似合いそうな椅子か…

優しくて、明るい性格の幽霊が使う椅子。



少し悩んでいた時、パッと目に留まる椅子があった。

白が基調となっている中で、派手すぎない水色のワンポイントが入っている椅子だ。

優しい色使いが叶にぴったりだと思った。

椅子脚は僕が使っているのと同じように木でできていた。

「これかな。美月はどう思う?」

「いいじゃん可愛いし、私が貰いたいぐらいだよ」

僕は叶が見ていないことを確認して、店員さんにこの椅子を買うことを伝えた。



貰ったお金で足りそうな値段を提示された。

お金を払うと、店員さんは箱詰めされている商品を取りに倉庫に向かっていった。

「ねぇもう買っちゃったの?私が選んであげたかったな」

叶が後ろから声をかけてきた。

「いい感じのやつがあったから。もう決めちゃったんだ」

叶はしょんぼりとしていた。



「お待たせしました。重いから気を付けて持って帰ってね」

倉庫から出てきた店員さんは、大きめの箱を僕に手渡した。

お礼を伝えて僕たちはお店を後にした。



重いと伝えてもらっていたが、想像より軽くて負担にはならなかった。

できるだけ急いで帰らないと。



外はすっかり暗くなっていた。

駅に着き、さっきの駅員さんに対応してもらい電車を待った。

タイミングが良かったのかすぐに電車が来た。



電車の中は僕たち以外誰も乗っていなかったから、三人で並んで座った。

美月はあくびをしながら、目元をこすっていた。

さすがに急に連れまわしたこともあり疲れてしまったのだろう。

そんなとき僕のお腹が鳴った。

「お腹空いたね」

「夜ごはん何かな?」

二人が気を使ったように言ってきたこともあり、ただ恥ずかしかった。



あっという間に電車は僕たちが降りる駅に着いた。

改札機の前には、連絡先をくれた駅員さんがいた。

「みんなおかえり」

駅員さんは温かく迎えてくれた。

「荷物大きいけど大丈夫そう?」

「平気です。大きいだけであまり重くないので」

「怪我しないように気をつけてね」

最後まで駅員さんは優しかった。



歩きながら美月は携帯をつけた。

「そういえば修くん私の連絡先入ってるよね」

「それは入ってるでしょ。入ってなかったら美月に連絡できないじゃん」

僕は確認のために椅子の入った箱を置いて、携帯をつけた。

連絡先一覧を開くと、身に覚えのない一つの電話番号以外登録されていなかった。