幸せそうな顔でいる叶に美月が話しかける。

「あの~叶さん。そこにいるのかな?」

「いるよ!」

……

やはり美月には叶が見えてもいないし、声も聞こえていない。

「やっぱり聞こえないみたいだね…ちょっと悲しいな…」

さっきまで幸せそうにしていた少女の顔は少し曇ってしまっていた。

「じゃあ僕が通訳するよ」

僕の仕事量はかなり増えそうだが、これで叶が喜んでくれるなら頑張ろう。

「自己紹介からしてみるか。美月から」

僕が声をかけると美月は座り直して、姿勢を正してから話し始めた。

「はい!名前は美月といいます。気軽に美月って呼んでね。音楽を聴くのとか好きです。よろしくね、叶さん!」

美月は話しているときも、叶に対して話せるようにと僕の視線の先に向かって話してくれていた。

『ありがとう!じゃあ私は叶です。私のことも叶って呼んで欲しいな。私も音楽好きだよ!あと花が好きかな。よろしく!』

叶の自己紹介が終わると、美月はパチパチと拍手をしていた。

「ねぇ修くん、叶さんってどんな顔でどんな格好なの?」

改めて叶のことをよく見てから答える。

「叶は割と綺麗な顔立ちで、髪は美月よりも少し長くて、漫画のような綺麗な白のワンピース着てる子だよ」

叶は手で顔を覆っている。指の間からは顔を赤らめていることがわかる。

美月は少しニタニタと笑っていた。

「べた褒めだね~修くん。そんなに叶さんのこと好きなの~?」

「ただただ幸せになってほしいだけだよ。幽霊になったってことを、もう少し楽しめる時間がもらえたっていう捉え方をした方がよくない?」

僕の言葉を聞いた美月はため息をついてから言った。

「正しいこと言ってるのはわかるんだけど、そこはさぁ嘘でも好きって言おうよ」

美月の言葉を聞いた叶はすごく大きく頷いていた。

「え、なんかごめん」

とりあえず謝ってから、僕と美月はお弁当を食べ始めた。

「叶さんのご飯は?」

『みんなが美味しそうに食べる姿でお腹いっぱいになります」だってさ」

それを聞いた美月は何か考え始めた。

「なんか食べれないのかな?一緒に居るんだし、食事とかも一緒にしたいなって」

お腹いっぱいになるとか、お腹空かないとは聞いたけど食べれないわけではないのかな。

僕は叶の方を向いて聞いた。

「叶は何か食べれるものはないの?」

叶は少し頭を抱えてから答えた。

「ご飯は食べないけど、のどは渇くんだよね~だから水はたまに飲むよ」

幽霊って喉渇くのか…

「叶は水なら飲むらしいんだけど…」

美月に伝えると、

「おいしいお水を用意するって言ってもなんか味気ないよね…」

と言った。

しばらく考えてから美月は提案を出した。

「飲み物なら飲めるってことだよね!ならいろんな飲み物を用意してみるとかどう?」

それを聞いた叶はとてもとても嬉しそうだった。

「叶もうれしそうだよ。ありがとう」

「じゃあ明日から、修くんと私で違う飲み物もってきてとかしてみる?」

それを聞いて叶は嬉しそうに言った。

『私のために…ありがとう美月ちゃん』だって」

その後も雑談をしながら、楽しい食事の時間を過ごした。