教室に着いたら、もうみんなご飯を食べていた。

「あれ、めっちゃ話したってこと?」

「そうっぽいね」

僕もびっくりしたが、美月は何故だか嬉しそうだった。

「じゃあ先に屋上行って待ってるね」

美月は自分のリュックからお弁当を出して、教室から飛び出していった。

「ねぇ修ちゃん!!私を教室に置いて女の子とデートですか?」

僕も急いでお弁当を取り、教室を出た。

叶は不満気についてきた。

人がいないところまで来てから、叶に謝った。

「いなくなっててごめん」

「修ちゃん心配したんだよ。顔も傷だらけで…何があったの?」

和樹のことは黙っておかないといけない。

「いや~階段から転げ落ちちゃって」

「ふーん、それであの子に絆創膏貼ってもらったの」

「悪かったって。知らない教室で知らない人たちに囲まれて、知らない授業を受けるなんてつらかったよな。もっと早く戻ってくるべきだった」

謝ってからそう伝えると、叶は少し満足そうに

「わかればよろしい」といった。

美月にも叶を紹介したいし、屋上に急ぎたい。

「さあ、お昼食べに屋上へ行くぞ」

大きく頷いて、叶は楽しそうについてくる。

屋上の前まで叶と雑談をしながら向かった。



屋上の扉はすでに鍵が外れていた。

「あれ、鍵空いてるね」

この叶の発言には違和感を覚えた。

「なんで鍵がかかってること知ってるの?」

叶はいつものように笑いながら

「屋上はだいたい鍵がかかってるものでしょ」と答えた。

それもそうだ。事件や事故があったら先生たちは責任問題になるんだから。

「さあそんなことよりもご飯食べよ!」

「屋上に出て食べるんだよ。こっちおいで」

僕は鍵の外れた扉を開けて、屋上に入る。

「修くん!遅いよ~」

扉から少し離れた位置から美月が僕に声をかける。

「ねぇ修ちゃん。私と二人で食べるんじゃないの?もしかして仲良し自慢ですか?優しい叶さんも怒っちゃうよ!ぷんぷん」

僕をからかって遊ぶように、優しく怒ってくる。

僕の目的は、叶に楽しい思い出を作ってあげること。

「違うよ。美月は君の友達になりたいと言ってくれた子だよ」

叶は僕の言葉を聞いて、僕の前で見せてくれていたものとは違う笑顔を見せた。

これが学校生活での思い出の一ページ目になるのかな…

「いつでも………ね…」

笑いながら涙を浮かべる少女は、ただただ美しく見えた。