「ずっと一緒にいれますように………

 私の願い…叶うかな…」

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誰かと僕は話をしていたはずなのに。

僕は気が付いたときには裁判所にいた。

裁判がちょうど終わったらしい。

罪状は殺人。

時間の流れがゆったりと流れているように感じていた。

ふわふわと聞こえてくる、知らない内容。



裁判官の口からは軽い口調で

「判決は無罪とする。」

という言い渡しがあった。

僕は無罪になったらしい。

なぜ無罪になったのか。



「僕は誰を殺してしまったのか」

何も思い出せない。ぼんやりとした記憶。誰もいない個室でつぶやいた。

「なんで人を殺したんだろう」

これから母が迎えに来るらしい。どんな顔をして会えばよいのだろうか。

僕は暗い部屋で自分を責め続けた。

(なんで殺してしまった。なんで覚えてないんだ。)



1時間ほど知らない罪について反省していた。

母が迎えに来たらしい。

僕は母が待つ車へと歩く。

まずは謝ろう。

母が車の中からこちらに手を振っている。

なぜか機嫌が良さそうに見えた。



いつもは重いと感じるのに、今日はなぜだか軽く感じた古い車のドアを開け、僕は真っ先に伝えた。

「母さん。迷惑かけてごめんなさい」

すると、母は少し微笑んだ。

「いいの、いいの」

何か変だった。殺人を犯した息子に対して、笑顔で許すことはあるだろうか。

僕は疑問を感じつつ続ける、

「でも母さん、殺人だよ。どんなに謝っても償えない。重罪を犯してしまった」

母は驚いていた。罪状を知らなかったのだろうか。

もしそうならば、笑いかけてきても不思議ではない。



静寂が続く車内。

少しの時間が過ぎ、母が問う。

修太朗(しゅうたろう)はなんでその人を殺したの。それと誰を殺したの?」

僕は今までも状況を整理しようと、時間を使っていた。

だからこそ何も思い出せないことに違和感を抱いていた。

「母さん。僕は誰を殺したの。何も思い出せないんだ」

僕は正直に告げた。そうするしかなかったから。

すると母は答える。

「それはそうでしょ。あなたは誰も殺していないのだから」

僕はますます意味が分からなくなり、混乱した。

「私は修太朗のお迎えを頼まれただけで、あなた特に悪いことはしてないでしょ」

「え…」

僕は自身が人を殺していなかったということに安心した。

しかし僕は無罪と言われた瞬間を確かに覚えている。

夢だったのだろうか。