好きだけど、好きなのに、好きだから

練習試合は最終日。

三日間、予定されてる試合は六試合。

そのうち五試合が終わった。

昼の休憩。

俺は、体育館の外階段に座って試合を振り返る。

ふーぅ。

すげぇ、悔しい……

藤森北は一度も勝てていない。

「佐伯君」

優里亜先輩が、扉の隙間から顔を出す。

「隣いい?」

「うっす」

「はちみつレモン作ってきたの。皆は取ったから、これ佐伯君の分。」

「どうもっす」

隣に座った先輩は、はちみつレモンを食べる俺を見てニコニコとしている。

「はちみつとレモンってね。疲労回復とエネルギー補給ができるだよ」

先輩が熱心に話している。

「先輩みてぇ……」

つい出てしまった俺の言葉に、先輩は俺の顔を見る。

「えっ?」

俺も気付くと、先輩を見入っていた。

目が合って……

「なんでもねぇっす」

疲労回復とエネルギー補給……

先輩の笑顔を見ると何だか疲れも吹っ飛ぶし、先輩が隣にいると試合に勝てねぇイライラも頑張ろうって気持ちに変わる。

先輩は、はちみつレモンみてぇだ。