喫茶店のBGMはアイドルグループの曲から私の子供の頃に死んだ、いかれた目をしていた平和主義者の曲に変わった。
本気で世界を平和にしようとしたバカな男だった。
ギター一つで世界を救おうとした男。
そして灰色の世界を作った張本人だ。

“人類は一つだ! 愛こそ全てだ! だから僕は歌うんだ!”
皮肉な結末だった。
”戦ってもなにも生まれない 理解しあえば愛が生まれる”
この曲が引き金となり各地で紛争を起こし世界を滅亡させた。
最後はお約束の大量殺人兵器で皆殺しだ。
また原爆で罪もない日本人がたくさん死んだ。

また日本人だけが悪者扱いされた。

クリスマスイブの夜。
いかれた目をした彼は東京タワーの頂上から身を投げた。
そしてその日、たくさんの若者が自殺をした。
私の父親もその中の一人だった。

”愛し合っているかい? 愛し合ってるかい?”
その曲調にあわせて銀色のスプーンでテンポ良くテーブルを叩いた。
“コン コン コン”
彼みたいに薄っぺらい音が鳴ったのでクスクスと一人で笑った。
同時に虚しさだけが残り、すぐに私のチープな演奏は幕を閉じた。