「千世ちゃん、音消して!」
「ごめんごめん」

 熱心に見入るママに謝りながらスマホを開く。――今度はそこにあった名前に驚いて、わたしは思わずスマホを落とした。

「千世ちゃん!」
「ごめんって!」

 ――だって、だって!

『刑事さん……助けて』

 わたしは震える手をどうにか抑えながらスマホを拾って、メッセージアプリを開く。

『今日、智成くんと晶くんに呼び出された?』

 王子くんから、そう届いていた。

 ……どう返すべきか迷う。呼び出されてないよ、と言えばいい?

 ……いやいや、呼び出した話をあのふたりから聞いていたら、嘘をつくことになるじゃん。呼ばれたよ、佐藤先生にも? ……これはいらない気がする。

 迷いに迷って、わたしは一言『うん』とだけ送った。
 するとすぐに既読がついて、返信が送られて来る。

『迷惑かけてごめんね』

 シンプルに1行のメッセージが来た。

『わたしは大丈夫。でも、佐藤先生も心配してたよ』

 ドキドキしてきた。これを送るのは正しいかな。でも、思い切って送ってみることにした。
 顔を上げてテレビを見る。刑事さんが奔走しているシーンだった。
 手の中でスマホが震える。画面に視線を落とす。

『てことは、佐藤先生にも何か聞かれたってこと?』
『まぁ…うん』

 余計なこと、言っちゃったかな。
 でも、いずれバレることだと思う。

『まじか』
『ほんと逢沢さんごめんね』

 二つ続けて返信が来た。
 ……謝られてばっかりだな。わたしはそんなに迷惑をかけられたなんて、思ってないんだけど。

『全然大丈夫だから! 気にしないで』
『ありがとう』

 お辞儀をするうさぎのスタンプが送られてくる。
 ……やっぱり、なにかあったのかな。

 だって佐藤先生だけならまだしも、王子くんのことをよく知るであろう館町先輩と菅凪先輩からも呼び出された。
 なにもない、ということはないだろう。

 でも、ただのクラスメイトであるわたしには、なにも知る余地はない。教えてもらわなければ、土足で立ち入る問題ではないからだ。