『人気急上昇中のアイドル練習生グループ、セレンディピティ』
テレビからは、王子くんたちを紹介するVTRが流れていた。それはコンサートのパフォーマンス映像のようで、キラキラ光るストーンがたくさんついた衣装で、マイクを持って歌って踊る姿が流れる。
……落ち着くのよ、千世。
ここで変な様子をお姉ちゃんに見せれば、色々と終わるでしょ。
「やっぱダンスうまくなったな〜」
「え、下手だったの?」
「動きが小さいとかね。あとなんていうのかな、キレが増したというか」
「へぇ……」
タオルの隙間からテレビを見る。5人いるのに、視界に入るのは王子くんばかりで、つい目で追ってしまう。
……これがアイドルか。ちゃんとセットされた髪の毛と、キラキラの衣装にキレのあるダンス。真剣な顔と、カメラに抜かれたときの輝く笑顔。
ウッドデッキで練習する王子くんの姿がよみがえる。
不思議だ。同じ制服で、教室にいる王子くんとは全然違う。
「早くデビューしないかなー」
「だね……」
これでもまだ、デビューしてないんだよね。
カルキスもまだだっけ。デビュー待ちのグループはたくさんあるんだ。
「え、てか待って、館町たち英城でしょ」
「……王子くんもだよ。千世同じクラス」
「はぁ!?」
あっ、墓穴掘った。めんどくさいこと言っちゃった。
「なんで!? 王子くん音坂だったじゃん!」
もしかしてデビューすんのかな!? え、やば! などと一人で騒ぎ始めたお姉ちゃんを置いて、わたしは立ち上がる。ちょうど王子くんの出番も終わったし、髪の毛乾かしに行こう。

