これはきっと、恋じゃない。



「それよりどうする?」
「ああ、発表だよね。国決めないといけないんだっけ」
「そう。生徒会の先輩によるとね、ネット写すよりも本の方がいいよって」

「なんで?」
「みんながネット写すから、本の方が褒められるとかなんとか」
「なるほど。その先輩、策士だね」

 そう言うなり、座ったばかりだというのに王子くんは立ち上がった。

「どしたの?」
「どしたのって、本選びに行こうよ」

 王子くんは片手をポケットに入れると、もう片方の手でわたしを手招きする。

「……ドラマみたい」

 思わず呟いたその声に、王子くんは「春よ恋い?」と反応する。

「よく覚えてるね」
「記憶力いいからね。……『なにしてんだ、行くぞ』」

 そのセリフを言い終わるかというとき、からだじゅうにぶわっと鳥肌が立った。

「うわ! 楢崎永久みたい!」
「真似っこしてみた」

 真似っこって。
 その言い方がかわいくて、つい笑ってしまった。

「えっ、ちょ、なんで笑うの!」
「ごめんごめん、真似っこって言い方、かわいくて!」
「もういいから、行くよ」

 王子くんはぷいと顔を背けると、少し拗ねたように先を歩く。

 ……ドラマみたいだ、本当に。
 これがドラマだとしたら、私はヒロイン?
 そして恋に落ちる相手は、今をときめく人気アイドルの王子遥灯くん。

 ……なんてね。

「ていうか、国決めてないじゃん」
「本棚見ながら決めようよ」
「歴史系の本棚どこ?」
「知らないのにぐんぐん歩いてたの?」

 と言いながらも、わたしも図書館なんてほとんど来ないから知らないんだけど。
 本棚に書かれた分類を見ながら歩く。わたしの背よりも高くて王子くんと同じくらいの高さの本棚は、上までびっしりと本が詰まっている。

「あ、あった!」

 窓辺の端っこに歴史系の棚はあった。中国の歴史やアメリカ、ヨーロッパなどいろんな地域の本が並んでいて、布張りの高そうな本まである。

「これ、日本は除外?」
「そりゃそうだよ、日本史じゃん」
「だよね。逢沢さんは好きな国とかある?」
「んー、あんまり考えたことないなぁ」

 本棚を見上げる。ふつうにアメリカとか? でもそれじゃあ面白みがないかな。

「あ、韓国とか? 最近人気だよね」
「漢字読めないからパス」
「なにその理由」
「……発表してるとき詰まったらやだし」

 意外とそれは重要だと思うんだけど。
 わたしはふらーっと視線を彷徨わせながら、いろんな本の背表紙を見つめる。ひとつの国だけ書いてある本から、地域についてまで、本当にいろいろな本があった。

「王子くんはどこがいい?」

「俺はね――」と、王子くんが言いかけたときだった。