「どういうつもりなんだよ」

 ダンスレッスン前、智成はスタジオに入るなりスマホの画面を遥灯に突き出した。そこに表示されている画面を見て、遥灯は目を見開いて絶句した。

「なに、これ……」
「なにって、説明してほしいのはこっちだよ」
「知らないっ」
「知らないじゃないだろ! これは遥灯で、こっちは逢沢さんだろ」

 スマホの画面に写し出されているのは、一枚の写真だ。
それはこの間、逢沢さんと屋上でたまたま会ったときの写真だった。

 なにかに耐えるような、不安そうなところがついこの間までの自分と重なって、気がついたら声をかけていた。こたくんにかけられたのと同じような言葉をかけたら、泣いてしまって。

 深い意味なんてなにもない。
 下心もないし、ただ逢沢さんに元気になってほしくて。

 ――でも。

 『王子遥灯くん彼女いたっぽい😭😭』という文字を否定したくても、この写真は否定のしようがない。どう見ても、勘違いされたとしてもおかしくないから。

「……そうだけど、別に逢沢さんとはそういうんじゃない」
「じゃあなんなんだよ」
「それは……」

 ただのクラスメイトだ。そう言えばいいのに、その言葉がなかなか出てこなかった。まるで、そう思いたくないみたいに。

「智成、一旦落ち着いて。話そうよちゃんと」

 晶の静止を止めずに、智成は捲し立てる。

「わかってるよな。俺たちがいま、どういう状況なのか」
「――わかってるよ!」

 わかってる。痛いほどに、わかってる!
 わかっていなかったら、学校にだってちゃんと行ってる。

 今が大事。正念場。他のグループからは、きっとすぐにデビューできると言われてきた。
 でも、何度期待したってそれは簡単に崩れていった。

 毎回毎回、コンサートをやるたびに、事務所でマネージャーに呼ばれるたびにそう思ってきた。ここで発表されるかも、デビューしますと言われるかもしれないと、いつだって期待し続けてきた。

 でも、そんなことはなかった。それはすべて泡沫で、期待はいともかんたんに裏切られていった。

「とりあえず、遥灯くんの話も聞かせてよ」

 琥太朗に言われて、遥灯はうなずく。そしてその場に座り込んだ。