「みふぉとふん、おふぁへり(みことくん、

おかえり)」

アイスを口に放り込んだままそう言うと、

玄関から気だるげに濡羽色の髪をかきあげ

てはっした色気とは裏腹に、ランドセルを

からった小学生が現れた。

「……ただいま」

この子は京 尊君。京って書いて、かなぐり

と読むから、名前を覚えるのが苦手な私も

すぐに覚えた。

尊君の家はとても大きくて、父が有名な実

業家で母が有名なモデルさんだ。

だから尊君の両親は忙しく、家をあけるこ

とが多かったため、尊君は1人で留守番し

ていた。

それにみかねた(お隣であり尊君の母と親し

い)私の母が尊君私に任せてなさいと宣言し

てから、尊君を預からしてもらっているの

だ。


弟は私と母と3人暮らしで、同性がいなか

ったからか、家に男の子である尊君がいる

ことを私以上に喜んでいる。

表情があまり変わらないし、寡黙だから、

何を考えているのかよくわからないところ

はあるけど、最初のときより随分打ち解け

ている気がしてとても嬉しい。

今では家族のような存在だ。

頭は良いし、顔も母親に似たのか小学生と

は思えないほどかっこいいしで、小学校で

はファンクラブができているらしい(弟から

きいた)。

きっと、いいお嫁さん捕まえてくるんだろ

うなー,とアイスを舐めながらそう思った。