「遥、ごめん、別れよう」

その日は、青い日だった。青く青く、そして黒く。
雨。私は雨が好きだった。
手が濡れて、洗い流してくれる。
雨の日が好きだった。

じめじめとした空気が私と翔の間を通り抜ける。
涙なんか出なかった。
翔はきっと好きな人ができたとかそういう事をいっているんじゃない。
時間が来たんだ。
流されるまま生きてた私と彼には『永遠』と言った言葉さえも嘘になってゆく。
愛しているも好きもキスしたあとの熱も嘘になり、冷めていく。

「うん、分かった。」
「・・・・ごめ「別れよう、翔。今日で終わり。」
「・・・・うん」

翔は何か言いたそうな顔をしてやめた。
そういう所はいつまでもずるい。
彼はやさしいんだ。
人を傷つけるとか、痛めつけるとかそういう気持ちも言葉も知らない。
だから私は、翔にごめんと言わせない。言わせなかった。
バイバイ翔。

冷え切った図書室で何も言わず、
1年間の想いを2人で洗い流すように、
抱きしめあって、別れた。
胸に来る切なさが、なんだか私のお腹を痛くさせた。